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          愛を読むひと
           
          
          
           
          
          
          「永遠に想う」
           
          
          
          The Reader
           
          
          
          2008年 アメリカ=ドイツ
           
          
          
           
          
          
          
            
              
                
                
                 
                
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                監督 スティーヴン・ダルドリー 
                 
                
                
                製作 アンソニー・ミンゲラ、シドニー・ポラック 
                 
                
                
                脚本 デイヴィッド・ヘアー 
                 
                
                
                原作 ベルンハルト・シュリンク 
                 
                
                
                撮影 クリス・メンゲス ロジャー・ディーキンス 
                 
                
                
                美術 ブリジット・ブロシュ 
                 
                
                
                音楽 ニコ・ムーリー 
                 
                
                
                編集 クレア・シンプソン 
                 
                
                
                衣装(デザイン) アン・ロス 
                 
                
                
                字幕 戸田奈津子
                 
                
                
                製作会社ワインスタイン・カンパニーミラージュ・エンタープライゼス
                 
                
                
                配給 ワインスタイン・カンパニーショウゲート
                 
                
                
                公開2008年12月10日 2009年6月19日
                 
                
                
                (上映時間124分)
                 
                
                
                 
                
                
                 ・ハンナ・シュミッツ:ケイト・ウィンスレット
                 
                
                
                ・ミヒャエル・ベルク:レイフ・ファインズ
                 
                
                
                ・少年時代のミヒャエル:ダフィット・クロス
                 
                
                
                ・ロール教授:ブルーノ・ガンツ
                
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                ・ラスベガス映画批評家協会賞:
                 
                
                
                助演女優賞、若手俳優賞 
                 
                
                
                ・放送映画批評家協会賞:助演女優賞
                 
                
                
                ・シカゴ映画批評家協会賞:助演女優賞
                 
                
                
                ・サンディエゴ映画批評家協会賞:助演女優賞
                 
                
                
                ・ゴールデングローブ賞:助演女優賞
                 
                
                
                ・全米映画俳優組合賞:助演女優賞
                 
                
                
                ・英国アカデミー賞:主演女優賞
                 
                
                
                ・アカデミー賞:主演女優賞
                 
                
                
                ・ヨーロッパ映画賞:女優賞
                 
                
                
                 
                
                
                
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          1958年のドイツ。15歳のマイケルは21歳年上のハンナとの初めての情事にのめり込む。
           
          
          
          ハンナの部屋に足繁く通い、請われるままに始めた本の朗読によって、2人の時間はいっそう濃密なものになるが、
           
          
          
          ある日、ハンナは忽然と姿を消す。
           
          
          
          1966年、大学で法律を学ぶマイケルは傍聴した法廷の被告席にハンナを見つける。
           
          
          
          裁判に通ううちに彼女が必死に隠し通してきた秘密にようやく気づき、衝撃を受けるのだった。
           
          
          
           
          
          
          1998年にミラマックスが原作の権利を取得。
           
          
          
          ハンナ役にケイト・ウィンスレット、ミヒャエル役にレイフ・ファインズが配役されたが、
           
          
          
          ケイトのスケジュール(『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』の撮影)が合わず、
           
          
          
          ニコール・キッドマンがハンナ役となった。
           
          
          
          2007年8月から撮影開始。2008年1月にニコールが妊娠により降板し、
           
          
          
          当初配役されていたケイトがハンナ役に起用された。
           
          
          
          撮影も当初はロジャー・ディーキンスが担当だったが、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の契約があったため、
           
          
          
          クリス・メンゲスに変更された。
           
          
          
          製作のアンソニー・ミンゲラとシドニー・ポラックが他界したため、
           
          
          
          ドナ・ジグリオッティとレドモンド・モリスを新たに加えた。
           
          
          
          公開時期を巡ってスコット・ルーディンとワインスタイン・カンパニーが対立し、2008年12月公開が決まったが、
           
          
          
          スコットは製作から降板した。アカデミー賞の規定ではプロデューサーは3人までとされていたが、
           
          
          
          今回は4人でも認められた。
           
          
          
          舞台はドイツであるが、全編英語による製作である。
           
          
          
          そのため登場人物名も英語読みとなっている(ミヒャエル→マイケル等)。
           
          
          
           
          
          
          『愛を読むひと』(The Reader)は、2008年のアメリカ・ドイツ合作映画(英語製作)。
           
          
          
          ベルンハルト・シュリンクのベストセラー小説『朗読者』を、
           
          
          
          『めぐりあう時間たち』のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。
           
          
          
          第81回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされ、ケイト・ウィンスレットが主演女優賞を受賞。
           
          
          
           
          
          
            
          
          
          ここのところ、職をなくし、落ち込んでいるかと思えば映画熱を再燃させ、大量にレンタルして来ては夜な夜な
           
           
          
          映画を観まくってるtuziさんが、久々に満足したという「愛を読むひと」についてお話しをうかがいたいと思います。
           
           
          
           
           
          
          「tuziさん、このほど職をなくされたと聞きましたが、現在の心境をひとこと」
           
           
          
          tuzi「・・・落ち込んでます。これからどうして食べていこうかと・・・」
           
           
          
           
           
          
          「そんな切羽詰った状況なのに、この頃はレンタルビデオにハマッてるということですが?」
           
           
          
          tuzi「・・・ええ、なにげに寄ったら、レンタルすればするほど、単価が下がるものですから、つい大量に・・・」
           
           
          
           
           
          
          「これまで、どのような映画を観ましたか?」
           
           
          
          tuzi「・・・はい、昨年のアカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した「英国王のスピーチ」や、
           
           
          
             カンヌのパルムドール受賞「白いリボン」、韓国映画の「息もできない」などです。」
           
           
          
           
           
          
          「それで、ご感想は?」
           
           
          
          tuzi「「英国王のスピーチ」は、アカデミー賞で話題になりましたし、受賞もしてるので期待してたのですが、
           
           
          
             期待したほどではありませんでした。ただ、現女王のお父上の実話をもとにしたストーリーですし、
           
           
          
             王位を放棄したお兄さんのエドワードに、実際の王の顔がそっくりなのには驚きました」
           
           
          
           
           
          
          「(顔かいっ!)・・・で、韓国映画のほうは?」
           
           
          
          tuzi「こちらは、パッケージ写真を見て気になったので借りたのですが、大変良かったです。
           
           
          
             愛すべき人の悲劇でした。ぜひ観て欲しい一本です。あと、「母なる証明」も良かったです。
           
           
          
             ラストシーンには思わず息をのんでしまうこと請け合いです。
           
           
          
             「白いリボン」はイヤーな予感的中で、批評家には絶賛されてますが、私の好みじゃなかった。
           
           
          
             なぜあの映画がカンヌのパルムドールなのかさっぱり・・・。
           
           
          
             賞賛の言葉に「すでに古典」とあったのには苦笑してしまいました。
           
           
          
             競馬といっしょで、映画選びは一種の賭けですね。下馬評はあてにならないものです。」
           
           
          
           
           
          
          「では、映画選びに関して海千山千のtuziさんが、今回大絶賛の「愛を読むひと」についてですが。
           
           
          
          レンタルのきっかけは、やはりアカデミー賞受賞が大きく影響してるのでは?」
           
           
          
          tuzi「ええ、そうです。もし、なんのタイトル(受賞)もなかったら借りることもなかったでしょう。」
           
           
          
           
           
          
          「今回はビンゴだったのですね?」
           
           
          
          tuzi「はい。久々に満足のいく映画と出会いました。
           
           
          
             セックスシーンも思ったほど官能的じゃなかったし、裁判の行方などはサスペンスみたいでしたし、
           
           
          
             なんといってもその後の物語こそがこの映画の醍醐味であって・・・
           
           
          
             振り返れば裁判まではプロローグのようなもので。」
           
           
          
           
           
          
          「セックスシーンといえば、R指定ですし、無修正とあっては、一歩まちがえばポルノですよね?
           
           
          
          そのようには考えなかったのですか?」
           
           
          
          tuzi「考えました。ちょっとでも間違えば「エマニュエル夫人」「郵便配達は二度ベルを鳴らす」になりかねないと・・・」
           
           
          
           
           
          
          「でも、違った?」
           
           
          
          tuzi「ええ。でも、ハンナ役を二コール・キッドマンになってたら、どうなってたことか・・・
           
           
          
             ケイト・ウィンスレットだからポルノにならなかったのかもしれません・・・
           
           
          
             そこんとこのキャストは、ほんと紙一重だと思います。」
           
           
          
           
           
          
          「映画のストーリーは、15歳のミヒャエルが気分が悪かった自分を偶然助けてくれた21歳も年上の女性ハンナと
           
           
          
          回復後に毎日のように彼女のアパートに通うようになって、いつしか彼女と男女の関係になる・・・
           
           
          
          ここまでのストーリーは現実離れしてるとは思いません。
           
           
          
          が、それがその後の人生を左右するほどの影響を持つとは・・・?」
           
           
          
          tuzi「そうですね。
           
           
          
             でも、私はあると思います。その時はいっときで、忘れてしまってもおかしくない出来事が、
           
           
          
             なぜか、いつまでも心の中に居座って忘れることができない。
           
           
          
             なにか大きな決断をしなければならない時に限って、頭をもたげてくる・・・大きく立ちはだかる・・・
           
           
          
             心から消えることのない感情・・・小さなトゲのように刺さったまま抜けないような痛み・・・
           
           
          
             ミヒャエルにとっては、15歳のひと夏の出来事がその後の人生を一変させてしまいました。
           
           
          
             大げさかもしれませんが、ハンナ以外に興味を持てなくなった、とでもいうか・・・
           
           
          
             結婚もし、子供もできた、それでもどこか冷めている。まなざしはハンナだけを追っている。
           
           
          
             妻を、いや他の誰かを愛そうとしてもできない。彼の心はハンナが占めている。
           
           
          
             人の気持ちは何に支配されているのかわからないものです。
           
           
          
             それは自分自身でさえ気づかない時があるのでは・・・」
           
           
          
           
           
          
          「でも、21歳も年上ですよ?自転車旅行した時も食堂で母子と思われたふたりですよ?」
           
           
          
          tuzi「あの場面は切なかったです。でもミヒャエルは意に介さなかった。
           
           
          
             むしろ教会で涙するハンナを見つめる彼のまなざしは彼女を「美しい」とさえ感じていたに違いないのです。
           
           
          
             好きになるのに理由はありませんから。」
           
           
          
           
           
          
            
          
          
           
           
          
          「では、21歳も年下のミヒャエルを、彼女はどう思っていたのでしょう?」
           
           
          
          tuzi「彼女にミヒャエルに対する愛情があったかどうか、正直私にはよくわかりません。
           
           
          
             ただ、彼女がミヒャエルを愛していたとしても、彼女は愛だけの人間ではないような気がするのです。
           
           
          
             時代背景から、戦時中でもあります。彼女は何か他のことも深く考えていたのかもしれません。
           
           
          
             また、この愛はいけない、とも思っていたでしょう。
           
           
          
             もともと堅物のハンナの態度は、ミヒャエルに辛く冷たく当たってるようにみえます。
           
           
          
             でも、彼女はミヒャエルを愛しく思っていたに違いありません。いつのまにか愛してしまったのでしょう。
           
           
          
             電車で、別の車両に乗ったミヒャエルを責めたのは、嫉妬以外のなにものでもない、と私は感じました。
           
           
          
             ハンナは、ミヒャエルを確かに愛していた。でも、彼女自身自覚するのを怖れていたのでしょう。」
           
           
          
           
           
          
          「ハンナを想いながらも、ミヒャエルがハイデルベルク大学の法科習生としてナチスの戦犯の裁判を傍聴した時、
           
           
          
          ハンナを助けなかったのはなぜですか?彼女に会わかなったのはなぜです?」
           
           
          
          tuzi「ミヒャエルはハンナを助けたかったと思いますよ。彼は苦しんだはずです。
           
           
          
             彼さえ証言すればハンナを助けられるのですから。でも、ハンナは自分の秘密を誰にも知られたくなかった。
           
           
          
             そして、ミヒャエルにはその彼女の気持ちを尊重しようと決心したのだと思います。
           
           
          
             彼女は、この裁判で極刑を言い渡されようとも、ウソをついてでも秘密にしてきたことを知られたくなかった。
           
           
          
             命が絶たれるかもしれないというのに隠したんです。それなのに、愛する人に暴かれたら・・・」
           
           
          
           
           
          
          「しかし数年後、ミヒャエルがテープを送ったことで、「彼は知っていた」とハンナも気づくことになりましたよね?」
           
           
          
          tuzi「そうですね。でもハンナは嬉しかったと思いますよ。身寄りのない天涯孤独のハンナに贈り物が届くんですよ。
           
           
          
             そりゃあ、嬉しかったと思います。自分がこの世の誰かの記憶に残ってたというだけでも・・・。
           
           
          
             しかも相手がミヒャエルなのですから。」
           
           
          
           
           
          
          「tuziさんなら?」
           
           
          
          tuzi「もちろん、私だって誰かの記憶に残ってたら嬉しいです。ただ・・・恨まれて残ってる方でしょうが・・・」
           
           
          
           
           
          
          「ミヒャエルは裁判の時には、黙っていたのに、なぜテープを送ったのでしょう?隠そうとしたはずなのに。」
           
           
          
          tuzi「そこですよ。「愛を読むひと」The Reader朗読者の題名は、15歳のミヒャエルを指すのではなくて、
           
           
          
             20年後、獄中のハンナのために朗読するミヒャエルを指すのではないかと思うのです。
           
           
          
             涙が出ました。ハンナの好きだった『オデュッセイア』『犬を連れた奥さん』『ハックルベリー・フィンの冒険』
           
           
          
             『タンタンの冒険旅行』といった作品を朗読する彼の姿。
           
           
          
             ハンナのために何かしてあげたい、一心に彼女を想う彼の姿。何かしてあげたい。それだけだと思います。
           
           
          
             年月が経って、ハンナも彼だけが「知ってくれていた」そんな気持ちになっていたと思います。」
           
           
          
           
           
          
          「tuziさんが一番好きなシーンなんですね。」
           
           
          
          tuzi「ええ。涙が。これほど誰かに想われたら「幸せ」だと思います。」
           
           
          
           
           
          
            
          
          
           
           
          
          「ふたりが再会するまで、長い時間が過ぎましたね」
           
           
          
          tuzi「無情です。」
           
           
          
           
           
          
          「ハンナの死と老いはどんな関わりが?」
           
           
          
          tuzi「時間は無情です。だからといって、老いがハンナを死なせたとは思えません。
           
           
          
             ん〜?どんな感情だろう?
           
           
          
             少なくともミヒャエルはハンナを迎える準備を丁寧に進めていて・・・
           
           
          
             初め連絡の電話では戸惑いなのか、迷惑そうにも受け取れるような受け答えだったけど、
           
           
          
             花をたずさえて迎えに行った・・・
           
           
          
             ハンナの死は私にもわかりません・・・でも自分に置き換えたらどうか、って考えると。
           
           
          
             彼女にとっての「坊や」だった彼に、今後身元引受人になってもらうのは・・・自尊心の強いハンナにとっては・・・
           
           
          
             第一、裁判でも隠し通した秘密を知られた彼と、これからどう向き合うか・・・
           
           
          
             現在ふたりの年齢差は15歳のミヒャエルと自分とのより、さらに大きく隔たっている・・・
           
           
          
             そんなことを思うと、死を選んだ彼女の気持ちも漠然とわかるような気もするし・・・
           
           
          
             でも、そんな単純なことが死を選んだ理由とは思えません。
           
           
          
             ハンナは、ミヒャエルとは無関係に、ここを出るときは死ぬ時だと、初めから決めていたのかもしれません。
           
           
          
             アウシュビッツのことを、彼女が「死んだ人は戻ってこない」と言い放った思いが、
           
           
          
             その覚悟を物語ってるのではないでしょうか。
           
           
          
             死はハンナだけの問題であって、ミヒャエルとは直接関係ないと私は思いました。
           
           
          
             もし、ミヒャエルが影響しているのであれば、15歳のミヒャエルの前から姿を消したのと同じように、
           
           
          
             やっぱりハンナはミヒャエルの前から姿を消すしかなかったとしか・・・
           
           
          
             といっても、15歳の時と今回では事情がずいぶん違っているのだけれど。」
           
           
          
           
           
          
          「死は決定的ですね」
           
           
          
          tuzi「ええ、ハンナの死はミヒャエルと無関係でも、ミヒャエルにとっては今度こそハンナから永遠に逃れられない。」
           
           
          
          「死がひとつのテーマにもなっていた映画、ベンジャミン・バトンでは‘永遠はない’と思わせる場面があって、
           
           
          
          対照的ではありませんか?」
           
           
          
          tuzi「ええ、終わりが来る・・・それは死によってでしたね。確かに死は避けられないものですし、
           
           
          
             例外なく誰の身にも訪れます。でも、ベンジャミンははっきり言ったではないですか。‘永遠はある’と。
           
           
          
             私も永遠はあると思っています。
           
           
          
             ・・・永遠てなんですか?‘永遠’という言葉がある限り、その言葉は実体を指していると思っていますし、
           
           
          
             いや、順序が逆ですね。心に起きたことが言葉になったのであって・・・
           
           
          
             現代人が見失っているのか、感じられなくなっているのか、だと。この世に存在しているはずなのに・・・」
           
           
          
           
           
          
            
          
          
           
           
          
          「それにしても、15歳のミヒャエルが書いたハンナの詩はどんなだったんでしょうね?」
           
           
          
          tuzi「ああ、劇中で読まれることはありませんでしたね。私も少し期待していたのですがね。
           
           
          
             ・・・それは誰にも知られたくないミヒャエルの秘密でしょう。
           
           
          
             もし語られるとしたら、ハンナひとりにだけでしょうから・・・」
           
           
          
           
          
          
           
          
          
          (2011年11月記)
           
          
          
           
          
          
           
          
          
            
          
          
           
          
          
           
          
          
           
          
          
            
          
          
           
           
          
           
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