マッハ!!!!!!!!

「光る技」
Ong Bak / Muay Thai Warrior
2003年タイ

 監督 : プラッチャヤー・ピンゲーオ(Prachya Pinkaew)
 製作 : プラッチャヤー・ピンゲーオ
 脚本 : スパチャイ・シティアンポーンパン
 出演 : トニー・ジャー(ティン)
     ペットターイ・ウォンカムラオ(Petchtai Wongkamlao,
     ジョージ(ハム・レイ))
     プマワーリー・ヨートカモン(Pumwaree Yodkamol, ムエ)
     ルンラウィー・バリジンダークン(ンゲク)
     スチャオ・ポンウィライ(コム・タン)
     チェータウット・ワチャラクン(ペン)
     ワンナキット・シリプット(ドン)
     チャタポン・パンタナアンクーン(サミン)
 撮影 : ナタウット・キッティクン

上映時間 : 108分


「マッハ!」に「カンフー・ハッスル」に「少林サッカー」に・・・
どれも話題作には違いないが、題名だけ聞いてても、さっぱり区別がつかない。
ま、「少林サッカー」はサッカーしてるだろうから、観れば気づくにしても、
「マッハ!」と「カンフー・ハッスル」は題名だけでは区別がつかない。
私は最近になって、ようやく、この2本を観たのだが、どちらにも「???」となってしまった。
「カンフー・ハッスル」ではカンフーの達人たちを観て「この人たちって何者??」て気分だったし、
「マッハ!」を観ては「これって本物??」てな気分で・・・
それは、映画前半の逃走シーンから始まった。
狭いガラスの隙間をすり抜けたり、車を跳び越したり、下を滑りぬけたり・・・
「こんなことが、特撮(CG)抜きで、生身の人間に出来るだろうか・・・??
うそだろ??・・・しかも映画の撮影中に。まさかね・・・特撮だよね・・・」
そんなことを思いながら、私は、あんぐり口をあけながら画面を眺めていたのだ。
とても人間業とは思えない。

「カンフー・ハッスル」もそうだったが、私は大抵、予告無しで映画を観ることが多い。
先入観がないから、驚きも大きいし、不思議に思うことも多い。
「ムエタイ、ってこんなにスゴイの?」
キックボクシング程度に考えていた私だったが、「マッハ!」で観たそれは、
カンフー以上に殺傷能力が高いではないか!
脳天めがけて肘を、膝を、脚を、ハイジャンプから容赦なく打ち下ろす。
「一撃で死ぬって・・・」
「く、く、首がぁ・・・怖いよぉ」




話しの筋は、いたって単純だ。
タイの田舎の敬虔な仏教徒の村から守り神“オンバク”像の首が何者かに持ち去られた。
悲嘆にくれる村人達を見て、「オンバクを取り戻してみせる!」と
一人のムエタイの奥義を極めた男ティン(トニー・ジャー)が立ち上がる。
村の長老は像の奪回のため、村一番のムエタイの使い手であるティン(トニー・ジャー)を送り出す。
アユタヤ王朝時代に制作された村の信仰の象徴を、都市バンコクまで探しにやってくる。
そこで、数々の試練、戦いを経て、めでたし“オンバク”像の首を村に持ち帰る、というお話し。

私の印象では、地味でマジメな映画。
笑いがないし、笑顔もない。オンバクの首奪還一筋!
映画で描かれるのは、ムエタイという、タイならではの古式武術・・・
“オンバク”像の首を奪還する戦いという、信仰心・・・
三輪タクシーのトゥクトゥクでのカーチェイス・・・
そして、都市部での麻薬の氾濫、賭け試合での金の動き、仏像売買の裏事情・・・

見るからに、素直で、田舎の兄ちゃんにしか見えない純朴な青年ティン(トニー・ジャー)が、
ムエタイの奥義一つで、それらに挑んでいく。
ハリウッドや香港の流行に流されることなく、オリジナリティのあるやり方で、
文化や町並みの特色を一本の映画の中で、魅力的に表現している。
「・・・それにしても、ト二ー・ジャー、って何者??」




これが映画デビューというト二ー・ジャーは、元々スタントマンである。
予告編では「一つ、CGをつかいません!」「二つ、ワイヤーを使いません!」
「三つ、スタントマンを使いません!」「四つ、早回しを使いません!」という、キャッチコピーだったそうだが、
映画前半の逃走シーンではジョージにスタントが使われており、
トゥクトゥク・アクションでは一部のシーンでワイヤがトゥクトゥクに使用された。
が、
ト二ー・ジャーのアクションは、あくまで肉体を酷使したガチンコであり、
ノー・スタント、ノー・ワイヤ、CG、早回しなし!というから偉い!!!!!!!!凄い!!!!!!!!
今後、ムエタイ映画が何本作られることになろうとも、この映画の素朴にして完成された魅力は廃れないだろう。
さらに素晴らしいことは、ムエタイは、実際のムエタイ、古式ムエタイが忠実に再現されているということだ。
これらはカンフーアクションとは異なるムエタイ映画にしたいという制作陣の意向でもあったというが、
単なるアクションにとどまらず、迫力満点のファイトで見せた、本物が光る。
タイの元スタントマン俳優トニー・ジャー主演の華麗な技を観たまえ!
真の技は実に美しい!
長すぎる滞空時間、乗用車を飛び越えてしまうおそるべき身体能力、顔面にモロに当てている格闘シーン、
どれもこれも開いた口がふさがらない。




アクションの設定は1970年代から1980年代にかけて『Born to Fight』や『アイ・ペット・ボー・コー・ソー』に
代表されるアクション映画で活躍したパンナー・リッティクライによるもの。
アクションで使われる格闘技が、ムエタイやラウェイを採用していることや、
トゥクトゥクを用いた大胆なアクションシーンが目を引き2003年の国内の興行成績1位を記録した。
また、2003年に行われたバンコク映画祭では、この「タイ独特の」アクションが受けて
上映権を求めて外国の配給会社が殺到した。

映画は、日本人や欧米人などの「先進諸国」の人物がムエタイで倒され、
逆に先進国の人物に賞賛を受けるシーンやミャンマー(ビルマ)のムエタイと呼ばれるラウェイの使い手が
主人公のライバルとなっており、最終的に倒されるという愛国色の強い作品でもある。

ワイヤーワークやCGの無駄な濫用が止まらぬ中国、香港カンフー・アクション現在にあって、
たとえ映画的技術は拙くとも「パフォーマーの身体そのものが映画であった時代」を
思い起こさせ、むしろ新鮮だった。



最後のシーン、ティンが出家する。私が唸ったシーンだ。
修養の精神は、中国武術然り、タイのムエタイにも生きている。
武術の修養は万国共通。
武術は武器ではない。
精神修養なのだ。


(2009年11月記)