秋菊の物語
「中国の百恵ちゃんは大女優」
秋菊打官司 1992年 中国=香港
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監督 : チャン・イーモウ
原作 : チェン・ユアンピン
脚本 : リュウ・ホン
出演 : コン・リー / レイ・ラオション
コオ・チーチュン / リュウ・ペイチー
(101分)
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ヴェネチア映画祭金獅子賞
同 主演女優賞コン・リー
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山深い農村に暮らす秋菊が裁判を起こす話。
些細なケンカで夫の股間を蹴って怪我を負わせた村長に対して憤怒する身重の秋菊は、村長の家に乗り込んだ。
中国の村長は村人の面倒を見る立場の、いわば親も同然である。
信頼関係で成り立っている。
だが、村長は詫びず、負けん気の強い秋菊は警察の調停へ。
村の巡査は村長にお金を払わせて穏便にカタをつけさせようとするが、秋菊にとってはお金の問題ではない。
村長に一言、謝って欲しいだけ・・・
納得のいかない彼女は遠くの公安局へ出かけてことを納めようとするが、事件はやがて県の裁判沙汰にまで
発展してしまう・・・
張芸謀(チャン・イーモウ)がドタバタコメディタッチで描く。
「秋菊の物語」(1992年)「上海ルージュ」(1995年)「あの子を探して」(1999年)の3作を
リアルドキュメンタリーの張芸謀第二期と呼んでいる。
第一期と呼ぶ1992年以降、彼の作品はドキュメンタリー的になるからだ。
映像からはそれまでの詩的な美しさはなくなり、あくまでリアルに社会を見つめていく。
「秋菊の物語」でも村のシーンは本物の農民を登場させ、街頭ロケでは隠しカメラを使って、
とことんリアリズムを追求した。
「あの子を探して」にいたってはオール素人の子供たちを起用。
2000年以降「初恋の来た道」「英雄」では回想が軸にストーリーが展開する。
「初恋の来た道」では回想シーンがカラー、現在をモノクロで描きわけている。
「英雄」では偽りの証言を行きつ戻りつ衝撃の真相が明らかになる・・・
これを私は回想美の張芸謀第三期と呼んでいる。
身重の農村主婦をコン・リーが演じる。
コン・リーは張芸謀監督「紅いコーリャン」(1987年)でデビュー。
初主演から大女優の貫禄十分だった。
「中国の百恵ちゃん」の異名を持っていた綺麗どこ女優の素質十分の彼女がこの作品で野暮ったい主婦、
しかも妊婦を演じた。
撮影の合間に方言の物まねをしてスタッフを笑わせていたと言う。
素顔の彼女はユーモアのある好奇心旺盛な女性なのだろう・・・
「紅いコーリャン」「菊豆」からは想像できないほどの田舎者を演じて、ヴェネチア映画祭金獅子賞で
主演女優賞を獲得した。
どんな役にも挑戦する「中国の百恵ちゃん」は、この作品で「世界のコン・リー」となった。
「菊豆」
コン・リーは「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993年)「始皇帝暗殺」(1998年)など
陳凱歌(チェン・カイコー)監督と組んだ作品も多い。
「始皇帝暗殺」
刺客荊軻が始皇帝に迫る!
陳凱歌は1952年北京出身。張芸謀と同世代の第五世代の監督だ。
北京電影学院監督科を卒業後、助監督を経て1984年「黄色い大地」で初監督。
ロカルノ映画祭で銀賞を受賞し、‘中国のヌーヴェルヴァーグ’と呼ばれた。
「始皇帝暗殺」の偽宦官役、王志文(ワン・ジーウェン)は私の好きな俳優のひとりだ。
彼は1966年上海生まれ。
主役はないが、テレビドラマ、映画ではインパクトの強い脇役だ。
またも話しは変わるが、始皇帝暗殺を題材にした映画では、張芸謀が監督した「英雄」がある。
ジェット・リー(リー・リンチェイ)、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツイイー出演。
史実に即しているのは陳凱歌の「始皇帝暗殺」だが、私は張芸謀の「英雄」も好きだ。
そのストーリーは最後の最後までどんでん返しが続く・・・
(2003年4月記)
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