紅いコーリャン

「名作の誕生」
紅高粱 1987年 中国

 監督 : チャン・イーモウ
 原作/脚本 : モー・イエン
 出演 : コン・リー
       トン・ルーチェン
       チャン・ウェン

(91分)
   ベルリン映画祭金熊賞


張芸謀(チャン・イーモウ)の初監督作品。
1950年西安出身。若い頃は農村に送られ、後に北京電影学院撮影科に入学。
当時のことを本人が「自分が最年長だった」と語っている。
卒業後カメラマンとして映画界入り。
1987年に呉天明監督「古井戸」では主役を演じた役者でもある。
チェン・カイコー監督の「黄色い大地」(1984年)で見事な構図を見せ高い評価を得る。
1987年「紅いコーリャン」で監督デビュー。いきなりベルリン映画祭金熊賞。
「紅夢」(1991年)でヴェネチア映画祭銀獅子賞。
中国を代表する第五世代監督のひとりだ。

彼の作品は、映像の大胆さが観客を圧倒する。
「菊豆」(1990年)では染物の布が下からの構図で撮られ印象に強い。
そして色彩。
強烈な赤、黄といった原色でインパクトを与える。
カンヌ映画祭ルイス・ブニュエル賞。


物語の舞台は1920年代の山東省。
嫁ぎ先の酒屋の主人は年老いていて、やがて杜氏職人と結ばれ子供も生まれる。
親子の幸せな日々に、日本軍の影が・・・




「菊豆」のストーリーも似ている。
舞台は解放前の中国。年老いた染物屋に若い嫁が嫁ぐ。
子供をつくる能力のない夫は、菊豆を折檻することで鬱憤を晴らす。
やがて菊豆は夫の甥である天青との不倫愛に走る。
そして子供をもうけ・・・

私は大胆な構図強烈な色彩で圧倒するこの3作を張芸謀第一期と呼んでいる。

第一期と呼ぶ1992年以降、彼の作品はドキュメンタリー的になるからだ。
映像からはそれまでの詩的な美しさはなくなり、あくまでリアルに社会を見つめていく。
「秋菊の物語」(1992年)、「上海ルージュ」(1995年)、「あの子を探して」(1999年)がそうだ。
この時期を第二期とする。

そして2000年「初恋の来た道」からを第三期としている。
第二期と第三期は他で話すとして、話しを戻そう。


「紅いコーリャン」の原作者、莫言(モー・イエン)さんは、これまた中国を代表する作家である。
ただ、私が無言さんを知ったのは映画を見たずっと後のことだ。
というのは、1994年に始めた中国語の勉強で、彼の「鉄の子」という本がテキストになったことがあったのだ。
それで莫言さんと「紅いコーリャン」が結びついたのだった。

彼の作品は戦争を扱っているものが多い。
莫言さんは1956年生まれ。張芸謀監督と同世代である。
彼は幼い頃、父が人民共和国成立前に上層中農であったため、社会主義体制下では貧困と差別に苦しみ、
文革中には小学校を中退し実家で農業を手伝っていた。
そんな彼自身の幼い頃の経験が作品となっている。
「紅いコーリャン」もそうだ。
高粱酒を作る幸せな親子のもとにも日本軍の侵略が押し寄せる。
衝撃的なラストシーンは日本兵が悲劇を招いている・・・


そして、コン・リーだが。
1965年生まれ。北京中央戯劇学院在学中に張芸謀に見出され、「紅いコーリャン」で映画初出演にして主演。
初出演とは思えない堂々たる演技です。
以後、張芸謀、陳凱歌(チェン・カイコー)監督と組んで数々の名作に出演。
中国映画には欠かせないトップ女優である。
1992年「秋菊の物語」で野暮ったい田舎の農村主婦を演じ、ヴェネチア映画祭主演女優賞を獲得。

莫言さんの原作、張芸謀監督とコン・リーのコンビ。
この3人が初監督、初出演で集まったっていうんだから驚きだ・・・

記念すべき名作はこうして誕生した!


(2003年4月記)