髪結いの亭主

「完璧な愛の形」
LE MARI DE LA COIFFEUSE 1990年 仏

 監督/脚本 : パトリス・ルコント
 音楽 : マイケル・ナイマン
 出演 : ジャン・ロシュフォール
       アンナ・ガリエナ / トマ・ロシュフォール
       ロラン・ベルタン / モーリス・シュベイ

(80分)


子供の頃から‘床屋さん’が好きなアントワーヌは女の理容師さんと結婚したいと思い続けていた。
中年にさしかかり彼はその夢を実現させる。
妻となったマチルドはとても美しく、優しく、抜群にうまい理容師だった。
二人は10年間なにごともなく静かに過ぎていくが・・・

パトリス・ルコント監督日本初公開作品。
他に、「仕立て屋の恋」(1989年)「イヴォンヌの香り」(1994年)などがある。
究極の愛し方、愛され方を描かせたらパトリス・ルコントの右に出るものはいない。


ジャン・ロシュフォールのアラブ風の踊り、アンナ・ガリエナの静かな色気。

映画も、床屋の店内を舞台に、そこへやってくる客の交流をとおして展開していく。
いや、展開はしないな。日々の時間がゆっくりと流れていく・・・

でも、私にはそんな平凡にみえる生活が、マチルドにとっては真綿で首を絞められる毎日だったのだろうか・・・?
考えすぎなんじゃないの?
取り越し苦労なんじゃないの?


衝撃のクライマックスは「なんで??」って感じだった。
マチルドは顔にはださないが10年間、そんな思いで生きてきたのだろうか・・・?

愛されすぎて怖い
幸せすぎて不安だ

それはそれで苦しいだろうに・・・

でも、それは言い換えれば、

失うのが怖い
だよね。

失うもののない私には頭では理解できても、経験がないから想像するしかないではないの。

さあこれで、二人の愛は永遠になった

私の心に残る、最も完璧な形の愛の映画だ。
マチルドの振り逃げ逆転大ホーマーってところかな・・・?


(2003年5月記)