善悪の彼岸

「官能」
OLTRE IL BENE E IL MALE 1977年 伊=仏

 監督/脚本 : リリアーナ・カヴァーニ
 脚本 : フランコ・アルカッリ
       イターロ・モスカッリ
 出演 : ドミニク・サンダ
       エルランド・ヨセフソン
  ロバート・パウエル


(116分)


19世紀後半、当時の精神、文化史に多大な影響を与えた女傑ルー・サロメとふたりの哲学者ニーチェ、パウル・レーの妄執の物語。
精神の開放を求める3人の赤裸々な生き様が鮮烈に描かれている。

この映画・・・
小難しい哲学は置いといて・・・なんて言ったら、エロス一色の世界になってしまう。
パウル・レーという哲学者はあまり聞きなれない名前だが、ニーチェだったら知ってるでしょう?
ニーチェと言えば‘実存主義’‘神は死んだ!’と言った偏屈者。

ヴォーヴォワールと開放された関係を実践して失敗した哲学者はサルトル。
ニーチェはその先輩。
ふたりの哲学者より進歩的精神の持ち主ルー・サロメは、ニーチェの理論を実践している女性だった。
だいたい、理論は机上だけで実践されることはないものだ。
学者の言うことは、いつの世でもそんなもんだ。
どこぞの経済大臣も理論は立派だが、理論だけで実際は使えないとか・・・


映画の舞台は1882年ローマ。
ペテルスブルクからやってきたルー・サロメ。
その卓越した知性と神秘的な美貌は、出会いの瞬間からふたりの哲学者の心をとらえる。
孤独な思索者ニーチェと、その若き友人パウル・レーである。
彼らの求婚を一笑に付し、三人一緒の生活を提案するルー・サロメ。

「三人一緒に学び、論じ合うの。どうしてそれがいけないのかしら?」

女は時代を超えていた・・・この思想こそ、ニーチェの理論そのものだった。

しかし・・・

進歩的な女とふたりの哲学者。
されど人間。

この生活は(=理論の実践)は長く続かなかった。

なぜか?

嫉妬
嫉妬が原因であっけなく崩壊・・・
やっぱり、哲学者の男どもは能書きだけで使えない。
その後、ニーチェは阿片にのめり込み、パウル・レーは男色の餌食にされ謎の死を遂げる・・・

ふたりの哲学者は自らの嫉妬心も克服できず、
理論に自滅した。

女はその隙間を縫うように精神を開放して
自由に逞しく生きた。

たとえ、強いられた結婚をしても尚、精神的に開放され自由だったルー・サロメは晩年にはフロイトのよき協力者にもなった・・・


この映画は「成人映画」だったように記憶している。
でも、当時はまだR18指定なんかなかったように思う。だって、私は映画館で見たんだもの・・・

でもって、私の頭の中は‘エロス一色’になってしまったのだった。
開放的なルー・サロメの逞しくも美しい生涯を通じて、机上の理論のもろさを知った。

そして、私の頭の中で色あせないのは・・・

ドミニク・サンダの大人のフェロモンだった


(2003年5月記)