シカゴ

「女は魔物」
CHICAGO 2002年

 監督・振付 : ロブ・マーシャル
 原案 : ボブ・フォッシー
 脚本 : ビル・コンドン
 製作 : マーティン・リチャーズ
 出演 : レ二ー・ゼルウィガー(ロキシー)
  キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(ヴェルマ)
  リチャード・ギア(悪徳弁護士ビリー)
  クイーン・ラティファ(看守ママ)
  ジョン・C・ライリー(ロキシーの夫)


ジョン・C・ライリー
ロキシーの夫役を演じ好評を得る

(113分)
 第75回米アカデミー(6部門)
  最優秀作品賞、最優秀助演女優賞
  最優秀美術賞、最優秀衣装デザイン賞
  最優秀編集賞、最優秀音響賞

 ゴールデングローブ賞
  最優秀作品賞
  最優秀主演女優賞・レ二ー・ゼルウィガー
  最優秀主演男優賞・リチャード・ギア

 ナショナル・ボード・オブ・レビュー
  最優秀新人監督賞・ロブ・マーシャル

 全米ブロードキャスト・フィルム批評家協会賞
  最優秀作品賞
  助演女優賞・キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
  最優秀アンサンブル賞
  レ二ー・ゼルウィガー
  キャサリン・ゼタ=ジョーンズ 
 フロリダ映画批評家協会賞
  最優秀楽曲賞「セル・ブロック・タンゴ」

 ラスベガス映画批評家協会賞
  最優秀助演男優賞・ジョン・C・ライリー

 英国アカデミー賞
  助演女優賞・キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
  最優秀音響賞

 全米映画俳優組合協会賞
  最優秀主演女優賞
  レ二ー・ゼルウィガー
  最優秀助演女優賞
  キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
  最優秀アンサンブル・キャスト賞

 アメリカ監督組合賞
  ロブ・マーシャル


1920年代のシカゴ。スキャンダルを逆手にとり、スターダムをしたたかに駆け上がるふたりの歌姫。
そこは賭けと駆け引きの世界。
なにがなんでも有名になりたい女たち。殺人者。悪徳弁護士。
スキャンダルに群がるマスコミ。

犯罪と金と名声

ボブ・フォッシーが遺した傑作「シカゴ」を舞台も映画さえも越えて史上最高のエンターティメントに仕立てたのは、
天才ロブ・マーシャル。

映画を見終わったら即行でサントラ盤買いに走ることうけあい!
私なんかお買得DVD付買っちまった・・・


はっきり言って私はミュージカルが嫌いだ。
普通に話していたと思っていたら、いきなり唄いだす、踊りだす・・・
その空々しさがたまらなく嫌いだ。
昔は、「ウエスト・サイド物語」「サウンド・オブ・ミュージック」などなど・・・
どこが名作じゃ?
むしずが走るんだよっ!

「シカゴ」は2002年米アカデミー作品賞だった。
私は日本での封切り前にその授賞式をテレビで見て、妊娠中でデブのおばちゃんと化した
キャサリン・ゼタ=ジョーンズを見てたまげていた。

「これが女優か?」

そして、客席のレ二ー・ゼルウィガーが写った時は
「かつてのブリジット、ベティがここで何してんの?」なんて思っていた・・・
まさか「シカゴ」の主演女優だなんて・・・!

最優秀作品賞のプレゼンターはカーク・ダグラス、マイケル・ダグラス親子。
突然カードを破いて会場騒然!
だが、これは「シカゴ」が受賞したという暗黙の合図だったのだ。
(キャサリン・ゼタ=ジョーンズとマイケル・ダグラスは夫婦)

イラク侵攻のため自粛ムードの授賞式で、女優のドレスは黒尽くめだった。
受賞者は口々にイラク侵攻に異を唱えていた・・・
そんなことばかりが印象に残る授賞式だった。

作品賞だからとりあえずチェック!

映画館に行く。

「はあ?ミュージカルなの?」

話の筋は私に「カイロの紫のバラ」を彷彿とさせる・・・。

「これが授賞式でトドのようだったキャサリン・ゼタ=ジョーンズ?本人?」
「これがベティ・サイズモアやブリジット・ジョーンズの日記でおデブだったレ二ー・ゼルウィガー?」

そして、最大の疑問は
「この歌は吹き替えかしら?このダンスはスタントかしら?」


歌もダンスも女優のレ二ー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギアはじめ
出演者自身と知った。

すごーい!

その振付は誰がしたの?
はまりにはまってるじゃないか!?
その才能にただただ脱帽・・・
ロブ・マーシャルさ!

それって何者?

ストーリーと音楽が正にピッタシ!これは映画であってミュージカルにあらず。

ザッツ、エンターティメント!

「腹話術インタビュー」最高!
「Mr.セロファン」最高!
「看守ママ」最高!
「捨て身のヴェルマ」最高!
「法廷でのリチャードの弁護ダンス」最高!


唄いまくるリチャード・ギア


どれをとってもピッタシはまっていて、空々しくない。
特に私のお気に入りは「腹話術インタビュー」だった。

唄える女優、踊る女優。
もう、びっくりよ!
にわか練習だけで、こうなれるもんなの?
本業は女優なのに、まるで・・・まるで・・・ミュージカルスター並みじゃないのさ!

こうなれるものなの?
女優って、これくらいじゃないと、つとまんないの?

そうなの?

リチャード・ギアって歌手じゃないよね。
なんで、唄えちゃうわけ?タップできちゃうわけ?
ただのやさ男かと思っていたら、とんでもなかった・・・

ていうか、出演者全てが一流役者よ!

スゲー・・・の一言。

誰がこんなこと考えたんじゃ?

だから!ロブ・マーシャルさ!

スゲー・・・いったい何物?

私がこの映画で一番気に入った点は大方のアメリカ映画のお決まりの結末。
善や正義が勝つのではなくて、ワル(ワルと言っても、相手の男たちがまいた種さ!)が
したたかに生き延びるというハッピー・エンディングだ。

HE HAD IT COMING


キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(左)ははまり役だし、レ二ー・ゼルウィガー(右)は意外な役で私を驚かせた!

この人たちって太っていたかと思ったら痩せたり、痩せていたかと思ったらトドになっちゃったり・・・
女優とは、げに恐ろしや〜・・・


もともと「シカゴ」はシカゴ・トリビューン紙の記者モーリン・ダラス・ワトキンズが
1920年代にクック郡裁判所が扱った事件について描いた戯曲だった。
1927年サイレント映画。1942年ジンジャー・ロジャースを主演に映画化「ロキシー・ハート」

その後、ボブ・フォッシー原案のミュージカル「シカゴ」は1975年初演。
批評家たちから絶賛を浴び、そして1996年にはフォッシーの愛弟子アン・ラインキングによってリバイバルされた。
トニー賞主要6部門の栄誉に輝く。
トニー賞を7回、「キャバレー」でアカデミー監督賞、「ライザ・ウィズ・Z」でエミー賞。
映画、テレビ、舞台と全メディアにわたって活躍。
1927年6月23日シカゴ生まれ。1987年9月23日死去。

天才・ボブ・フォッシー


その舞台の傑作を完全映画化。
監督・振付は映画界では新人、ロブ・マーシャル
ブロードウェイでは「蜘蛛女のキス」で振り付けデビュー。(映画「蜘蛛女のキス」は別)
トニー賞には過去6回ノミネートされている。
舞台では「キャバレー」がトニー賞、テレビでは「ア二ー」がエミー賞を受賞している。
1960年10月17日生まれ。

ロブ・マーシャル監督


製作は舞台版「シカゴ」をはじめ、著名なヒット・ミュージカルを仕掛け、
36個ものトニー賞を獲得している演劇界の重鎮、マーティン・リチャーズ


映画化するに当たってロブ・マーシャル監督はオリジナルのボブ・フォッシーの
振付を使わず自分が作った新しいものにした。
このことについて彼はこう答えている。
「僕はボブ・フォッシーをあまりにも尊敬しているから。彼は天才だし、僕に多大な影響を与えてくれた人だ。
その彼が創造した偉大なコレオグラフィーを僕の手で壊してしまうなんて、嫌だった。
「シカゴ」はまさにフォッシーの世界なんだ・・・。
「キャバレー」の映画化ではフォッシーも振付を全て使わなかっただろ・・・?」

キャスティングについて・・・
「とても苦労した。 キャサリン・ゼタ=ジョーンズは比較的すんなり決まった。
彼女がイギリスに住んでいた頃、ミュージカルに出演していたことは知っていたし・・・
リチャード・ギアは彼が、ピアノやクラリネットを演奏することを知っていたし、
過去に「グリース」などミュージカル経験があることがわかった。
困難だったのはロキシー役。
レ二ー・ゼルウィガーは僕が一番欲しい女優だった。
これまでも予想を裏切るような役を演じて、その幅の広さに感心していたからね。
それで、ちょっとした振付を作ってみたんだが、彼女がダンスを始めた瞬間に「彼女ならできる」とわかったよ」

リチャード・ギアのタップダンス・・・
3ヶ月間の特訓
「僕は舞台出身だから、代役にダンスさせるなんて絶対イヤなんだ」
レ二ー・ゼルウィガーも撮影の2ヶ月前から特訓を受けていた。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズは幼い頃からミュージカルに憧れ、舞台の「シカゴ」も、もちろん見ていたが、
レ二ー・ゼルウィガーは一度も見た事がなかったという。


サントラ盤聴きながら、私は長々書いてきたけど・・・

結局は・・・

とにかく黙って観てくれ!


(2003年5月記)